ホピ子製作日記:公開 #01

 皆さんこんにちは! スーパーGTに参戦する「HOPPY team TSUCHIYA」、そしてそのチーム運営をしている「つちやエンジニアリング」の代表・土屋武士です。このブログは、スーパーGTに参戦するレーシングカ―のGRスープラ、通称「ホピ子」の製作模様を綴っていく「製作日記」ブログです。こちらは「ホピ子復活プロジェクト」に参加いただいた皆さんだけが閲覧できるのですが、初回の今回はパスワードを設けず、私たちのチームがどんなテーマを持って参戦しているのかをお伝えしようと思います。是非ご覧になってください。

 まず私たちの活動趣意についてお話させて頂きます。いきなり重~い感じで始まりますが、包み隠さず真っ直ぐに正直に、というのが自分の生き方なので、そのまんまの自分を見てほしいのでさらけ出します。これまでもずっと面倒くさい感じで生きてきていて、これが通常営業なのでご心配は無用です(^^;

まずこちらを。我々のチームの支援団体である「25PRIDE Supporters CLUB」のサイトにある私の挨拶文です。

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25PRIDE ~土屋武士の挨拶~

『私たちは小さな町工場で、数人のメカニックとスタッフで運営しているプライベートレーシングチームです。一般車の整備やイベント運営などもしながら、大好きなレースをやるためにみんなでコツコツ、一生懸命働いています。

つちやエンジニアリングは1971年、神奈川県藤沢市で、父、土屋春雄が創業しました。親父は伝説のメカニックとして知られ、自動車メーカーのワークスチームを相手に数々の優勝と、6回の全日本チャンピオンを獲得し、「最強プライベーター」と呼ばれていました。

しかし2008年いっぱいで資金難により活動を休止。その職人の技術と情熱が活躍の場を失ってしまいました。それは同時に次代を担う若い職人が育つ環境が、一つ消滅してしまったということにもなります。

活動休止を傍で見て、改めて置かれた状況を見つめ直し、色々と摸索してきた私は、職人魂こそ伝承すべき「未来をつくる原動力」であるという考えに辿りつき、継承できる環境を作るため「つちやエンジニアリング」を日本のレースシーンに復帰させることを決断し、その為に必死で活動をしてきました。そしてたくさんの素晴らしい出会いがあり、2015年に日本の最高峰のレース「スーパーGT選手権」に7年ぶりに、つちやエンジニアリングとして戻ってくることができたのです。

2代目つちやエンジニアリングも「打倒ワークス」をテーマに再び挑戦し、復帰初年度から優勝を獲得しました。復帰2年目の2016年にはシリーズチャンピオンを獲得し、親子2代に渡っての全日本チャンピオンになり、トップチームとして復活をすることができました。

やる気もある、技術もある。そんな職人集団が何年もの間、活躍の場を奪われていたというこの事実が、今の日本の社会が抱えている問題の一つであると、私は感じています。利益を優先にするために本当に大切なものを失ってしまっているのでは——。

今の時代、“本質を貫いて生きる”ということは、本当に大変なことなのかもしれません。しかし、本質をないがしろにして未来を創造できるのでしょうか?

私は、本質を貫く職人のプライドが、現代の日本を豊かにしてきたのだと思っています。最先端のデジタル機器を使用して開発しているレースのステージにおいても、アナログな昭和のスタイルで勝負を挑み、小さな町工場でも復帰2年目にチャンピオンを獲得できたこの事実を見ても、職人の「人間力」が、大きな企業の持つ、組織力や資本力にも勝負を挑めるということの証明になったと思います。

私が今「やるべきこと」、それは良き伝統の継承と、次代を担う若い世代が成長できる環境を作ること。そして、それを長く続けることが私の使命だと、そう思っています。

資本力、組織力では大企業ワークスチームに及びもしませんが、私たちにはたくさんのハードルを越えて、壁を越えて前に進んできた「実現力」があります。1㎜でも必ず前に進むという想いで、常に己を磨き続けてきたからこそ、見ることができた景色があります。そしてそんな私たちを支えてくれる仲間がいてくれるからこそ——、たくさんの感動を共有することができ、力みなぎる未来を創造できるのだと、そう思っています。

このサポーターズクラブは、日本のレースシーンからプライベーターを失くさない為に、残すべき“本質”を守るために生まれました。レースには人を育てる為の要素がすごく詰まっています。また、この活動に触れることで、あなた自身にも熱い想いがみなぎってくることでしょう。

大切なことを忘れない為に——。

私たちと共に戦いましょう。』

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 この文章の内容が、我々つちやエンジニアリング、そしてHOPPY team TSUCHIYAの活動趣意であり、これを貫くことによって自分たちの存在意義を見出していると考えています。誰かの役に立ってこそ、社会の役に立ってこそ我々は存在できる。そんなお堅い考えを掲げて、いつも壁にぶち当たりながら必死にもがき生きています。

 今回、ホピ子が燃えてしまったことでチーム存続の危機に陥りました。さすがに今回ばかりは終了かもと思いましたが、レース後からSNSでファンの皆さんからの温かい支援の声がたくさん届き、強がりではなく、続けていけるんじゃないかという希望と勇気を頂きました。

 それでも、私たちがやりたいことなのに皆さんに甘えていいものかという考えが今でも拭えないのが本音です。しかし、うちの若いメカニックとエンジニアはこれからの日本のレース界を担っていく人材です。しかも親父が他界した後のつちやエンジニアリングで、自分たちでレーシングカーを設計し、製作して走らせた実績がある若い連中です。彼らが活躍する場がないとしたら——、未来が見えなくなるくらいの恐怖を感じます。

 レースで勝つとか負けるとか、それはそれで本当に刺激的だし楽しいし、こんなに興奮できることはなかなかないと思いますが、それに加えて「自分たちで作ったクルマでレースをする」ことがプラスされている環境こそ、職人が育つのにうってつけだと思っています。

 そんな環境を守っていきたい。親父たちが作ってきたこの日本のレースの環境を、ものつくりの文化をなくしたくない。それを引き継いでくれる若い連中の学びの場を守っていきたい。ホピ子を復活させることの真の想いはこんなところにあります。

 もちろんファンの皆さんの為にも、スーパーGTが素晴らしいレースになるように尽力できればと思っていますし、たくさんのドラマの一つになれるように、ファンの皆さんの想いを背負って走れればと思っています。

 他にもプライベーターとしての苦しみや喜びは、夢というよりは現実的に皆さんの日常と重なることがたくさんあると思いますので、チームの普段の仕事や活動をブログを通してお伝えできたらいいなと考えています。これらを発信することで、皆さんの勇気や希望の一つになれたらいいなと、がんばる理由の一つになれたらいいなと思っています。

 ちょっと長くなってしまったので、公開ブログ第一弾はこの辺で失礼したいと思います。もしかしたら公開第二弾もあるかもしれません。

 非公開ブログの第一弾は、ホピ子の「残った使えるパーツ集」にしようかと思っています。逆に言えば、それ以外はすべて燃えてしまったということですが・・・。とにかく赤裸々に発信していこうと思っていますのでお楽しみに!

生き残る為、生きていく為に、泥臭くやっていきます!

プライベーターの灯は消さない!

また明日からがんばります!!

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